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「寝ぐせ姫~いつも一緒に~」
序章 寝ぐせ姫と王子様

序章 寝ぐせ姫と王子様

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昔々…

 といっても、ほんの少しだけ昔のこと。海の見える街にとても素敵な王子様が住んでいました。

 王子様はそれはそれはとても綺麗な顔立ちをしていて、背も高く均整の取れた体つきをしていました。それに加えて王子様は勉強も人並み以上に出来ましたし、運動だってなにをしてもとても上手にこなします。
 
 そんな素敵な王子様に街中の女の人はみな頬を染め、王子様の立派な立ち居振る舞いに賞賛の溜め息を洩らさずにはいられませんでした。

 それだけ素敵な王子様のもとには毎日街中の女の人から手紙やプレゼントがそれはたくさん届けられます。しかし、王子様は毎日毎日それらに頭を悩ませていたのです。だって、王子様はそんなことちっともうれしくありませんし、そういうことをされるのが嫌で嫌で仕方ありませんでした。

 それでも王子様の立派な姿を誰も放っておくことなど出来ません。王子様はただただ普通に暮らしたいだけなのですが、そうするには王子様はあまりに素敵すぎたのです。

 ですが王子様ももうお年頃です。お友達が恋を楽しみ毎日を穏やかに過ごしているのをみて少しうらやましいと思うこともありました。自分も同じように穏やかに過ごしたい、そう思いつつも今のままでは自分には一生そんなことができそうにありません。
 王子様はすっかりへそを曲げ、いつも眉間にしわを寄せて過ごしていました。

 そんなとき、海の見える街にとても小さな女の子がやってきました。その女の子は王子様と同じくらいの年頃なのに、王子様の妹姫と同じくらいしか身長がありません。それに女の子の髪の毛はいつもいろんな方向に飛び跳ねるような癖がついていました。
 
 王子様はその子を寝ぐせ姫とよび、妹姫と同じくらいかわいがりました。すると小さな頃にお父様を亡くした寂しさを抱えていた寝ぐせ姫も、王子様をお父さんのように慕ってくれました。

 王子様は寝ぐせ姫の寝ぐせをからかったり、寝ぐせ姫のいろんな失敗を助けたり心配したりしながら日々を過ごすようになりました。王子様は寝ぐせ姫がとぼけた顔の兵士達と外で遊ぶ姿にハラハラしたり、ヤキモキしたりしながら過ごすうちに、やっと普通の高校生らしく過ごせる喜びを感じられるようになりました。
 不思議な事に寝ぐせ姫がそばにいてくれる、たったそれだけで王子様の眉間のしわが消えていくようになったのです。

 しかし、王子様を知る周りの者は皆信じられない思いで二人を見守っていました。だって、寝ぐせ姫はいままで王子様が出会ったどんな女の人よりもずっとずっと子供っぽくて、とてもじゃないけれど王子様とつり合いが取れるようには見えません。
 それでも王子様にはそんな事は気になりませんでした。だって王子様には寝ぐせ姫が妹姫と同じように大事な宝物に思えていたからです。

 二人が共に過ごす時間はとても穏やかに、とても緩やかに永遠に変わらず流れていくように思えました。
 しかし、そんな幸せな時間は突然舞い降りた不吉な影に奪われてしまいます。いつも一緒に過ごしていた時間、王子様にとって当たり前になってしまった寝ぐせ姫の存在が王子様の目の前で黒雲に覆われ王子様には取り戻すことができないほど遠くに行ってしまったのです。

 寝ぐせ姫の柔らかく温かな手、撫でるとクセの戻る髪、少し舌足らずな話し方、まっすぐに王子様を見つめていた綺麗な瞳…王子様の大好きだったその全てが光を失ってしまったのです。

 王子様は後悔しました。寝ぐせ姫の小さな体を抱きしめた腕を放してしまった事を。どんなに恰好悪くても、どんなに情けなくみえても、決して離すべきではなかったのです。
 王子様は何度も何度も同じ後悔に苛(さいな)まれながら、眉間のしわを深くしていくしかできませんでした。

 王子様、その手は決して放してはいけなかったのですよ。王子様にはそんな女神様の声が聞こえるような気がしました。


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